
それは何時でも「自分の本当の意思に依存している」かというと・・・
そうではない場合もあるものです。
特に、人の行動は集団や組織に大きく影響を受けます。
例えば・・
・ 凝集性の高い組織に所属している場合、
・ 集団構成員が「同調」に高い期待を示す場合、
・ 敵対する意見を排除する文化がある場合・などなど
自分がまるで普段の自分とは別人のような判断を下すことがある、
また、不敗の楽観視を内部に生み出すのです。
それが最近騒がれる組織的な非合法性の事件にも
言えるのではないでしょうか。
他にも、個人の過失というより
組織的な責任を問われたもので有名なものでは、
スペースシャトル、チャレンジャーの爆発事故、
東海村JOC臨海事故 などなど。
組織や社会勢力によるソロモン・アッシュの「同調」の実験(※後述)は
これらの一部を説明しています。
しかし、全てではありません。
さて、冤罪事件にも 説明しうる心理学の実験があります。
アメリカで行われた「スタンフォード大学」の囚人と看守の実験(※後述)です。
現在では 非倫理的とされるもので復元実験はないだけに、
今では心理の世界では貴重なデータとなっています。
「集団」、「組織」には、 「個人」とはかけ離れた部分の心理があります。
「個人」だけでは説明しきれない 周囲からの強い影響力があるのです。
そこで、心理学とは、「社会心理学」があったり、「犯罪心理学」があったり、
「文化心理学」があったり、そして「組織心理学」があったりするのです。
臨床心理学ばかりが 私たちの行動を説明するものではないし、
それだけでは不十分なのです。
社会をそんな多角的な目で理解しようとすることも
心理学を学ぶことの面白さなのではないでしょうか。



■ スタンフォード大学 「スタンフォード地方刑務所」実験とは
スタンフォード大学 「スタンフォード地方刑務所」とは
監禁の心理効果を研究するための実験的な模擬刑務所です。
被験者は一般的に募集され、彼らは実験当日に
コインで「看守役」「囚人役」を無作為に決められます。
看守役には 看守としてのシンボルを与えられ、
逆に囚人役は 人としてのシンボル(名前・洋服・自由)を
取り上げられました。
2週間という実験期間でしたが、2日目にして
精神的不安定を強く示した最初の囚人が現れ、
その後、続々と被験継続不可能とされ開放される囚人がでました。
一方、法律と秩序の維持という基準だけが与えられた「看守役」の被験者は
次第に支配的な力・屈辱的な権威的行動を身につけていく様子を報告しています。
この特別な空間で何が起きたのか・・
自分自身でも自分だとわからなくさせるほどの「力」が働いたのでした。
■ アッシュの「同調」の実験
ソロモン・アッシュ(Asch,S)は 7~9人の男子学生を集めて
「集団圧力による同調」の実験を行いました。
「3本の直線のなかで 別に示された1本の直線と同じ長さのものはどれか」
非常に簡単で、明確で、誤る確立は1%以下と言う
この質問をパターンを変えて繰り返すのです。
しかし、7~9人のうち、一人を除いてすべては「サクラ」、
彼らは明らかに誤った回答を答えていきます。
そのとき、たったひとりの被験者は 果たして「正しい答え」を
勇ましくも答えるのか、それとも「同調」するのか・・?
37%の試行で 多数者の謝った判断に同調したそうです。