2009年6月1日月曜日

「猫・犬と一緒に育ったロシアの少女」 News

http://www.mosnews.com/society/2009/05/27/sanddogs/ (MOSNEWS.COM)

http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2606452/4205414

小さな愛くるしい5歳の女の子が、
親と暮らしながら 
人の子として育てられる機会を得ることがなかったことが
残念でなりません。
心理学者と医療的支援を受けているそうですが、
彼女の、人としての人生の再起を強く願っています。




■ 言語の発達は、今後可能なのだろうか

言語は「本能」である

「言語は文化的人工物ではなく、したがって
時計の見方や 連邦政府の仕組みを習うようには
習得できない」
------------ Steven Pinker(「言語を生み出す本能」)

言葉の発達とは、周囲の人から教えられる「学習」の結果であると同時に、
人には、生まれもってもつ言語習得の能力があるといわれています。
言語学と認知科学に一大革命を起こしたノーム・チョムスキーは、
この生まれ持った、どの言語にも通じる文法【能力】を
「普遍文法」と呼びました。
この能力があるからこそ、
子供たちは何の知識もないまま生まれてきても、
どんな言語も、いくつの言語も
軽々と習得していくのです。

しかし、この言語習得能力にも「臨界期」があるといわれています。
この時期を逃してしまうと、言語の習得は困難になっていくというのです。

これは、私たち日本人が大人になってから英語の「R」の発音を学んでも、
上手く発音が出来ないことを考えればわかるかもしれません。
臨界期までに耳に入れなかった響きを、その後習得するには
楽なことではなくなっていくのです。
 
■ 親と共に居ながら なぜペットの振る舞いを学習したのか

子供が子供らしく育っていく過程には 
親が人としての振る舞いを教えるということが必要となります。
子供は、親の養育を受けて、親の姿を見て
振る舞いを学習していきますが、
彼女はなぜ、親と暮らしながら
親のように「人」としての振る舞いではなく、
ペットの振る舞いを学んだのでしょうか。

発達心理学では、子供が親を「大切な関係を持つ対象」であると
判断するには、あるプロセスが大切であることを説いています。
Scafferが名づけた「Rrciprocity(相互関係と訳すのでしょうか・・)」、とは、
母親が乳児の振る舞いに 大きくも小さくも反応し、
その母親の反応がまた、乳児の行動に影響を与える、
その反応を受けた乳児の振る舞いに、
また母親も影響を受け、応対する、
そのような関係のことを言います。

これが言葉を持たない乳児の人生初期の『会話法』なのです。

ここから何が生まれるのでしょうか?
「attachment (愛着)」であり、「bond(絆)」であり、
いずれも心を介した特別な関係が築かれるのです。

乳児にTVやビデオばかり見せても、
言葉がスムースに発達しないのはこのためでしょう。

ロシアのこの少女も、反応・影響を示しあったのは親ではなく、
傍にいた犬と猫だったのでは、と想像されます。

 

でも、これらの問題以上に予見できる心配とは、
彼女に、人として、また少女としての「心」が育ち始めたとき、
再び大きな試練を迎えることになるのかもしれないことでしょう。
 
様々な分野での研究の発展が、その時までには少しでも、
彼女の未来の幸福に貢献できるようになっていることを
望んでやみません。






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