2009年2月22日日曜日

情報の偏った日本のうつ病治療の現実

■日本のうつ病治療の現状:NHK特番

うつ病患者が100万人を超えたといわれています。
これまで「心のカゼ」と呼ばれるほど、
誰でもかかる可能性のあるうつ病について
NHKスペシャルが特番を放映しました。
(「NHK スペシャル うつ病治療 常識が変わる」 2009 22nd Feb

http://www.nhk.or.jp/special/onair/090222.html

うつ病は休養を取り、抗うつ薬を服用すれば

半年から1年で治ると考えられています。 
米国では約65%が回復するという統計も出されています。

しかし、番組では日本における別の問題の表面化を指摘していました。
治療の長期化、さらには、悪化の問題です。
現実には4人に1人は治療が2年以上かかり、

半数が再発するといわれているのです。
その背景には、不必要に多くの種類や量の抗うつ薬を投与されていたり、
診断の難しいタイプのうつ病が増加していることが

専門家から指摘されているということでした。

■ これまでは、薬物療法がうつ病治療の主流でしたが・・

 抗うつ薬は、現在の日本の精神医療の常識では

欠かせないものと考えられています。 
うつ病は、脳内の神経伝達物質であるセロトニン(不安感情・

睡眠・食欲を司る働き)が 分泌異常を起こす体の病気ともいえるものです。
これを抗うつ薬によって 適切な状態に制御することにより、
症状を和らげるのです。 気持ちに元気が出てくれば、
次はすこしずつ症状を良くするための精神療法、
つまりカウンセリングを用いて心の中の問題を軽くしていくのです。

番組では、実際はカウンセリングの利用率は非常に低いことを

指摘していました。 そこには、医師の技量レベルにばらつきがあるとも
いえるのかもしれないと言っています。
つまり、適切な診断を下し、適切な処方をすることが

困難な医者がいるということです。
その背後には、精神科医師が必ずしも心理の専門家ではない事実が

あるようです。

また、症状が必ずしも心理面に出るものばかりではない点。
身体に症状が表出する場合も多いので、
うつ病とは思わず、内科・皮膚科・婦人科など
医者を転々と 原因がわからず悩む人も多いことも事実です。

さらに、うつ症状は 必ずしもうつ病患者だけに現れるのではなく、
別の症状に併発して表れるケースも多い、
もし、そこを見誤ると、本来治療すべき主訴がすりかわって

しまうこともあるのです。

私がカウンセリングをさせていただいた方の中にも、

精神科の先生に診ていただいていながら、
「話を聞いてもらえることは無い」「薬が増えていく」「症状が良くなることが無い」と
おっしゃる方が確かにいらっしゃいました。

私たちカウンセラーは医療行為はできないので

薬の処方はしません。
出来ること、それは相談者の話を丁寧に、きちんと聴くことにつきるのです。
こうすることで、安心感を得、次第に現実的なものの見方・考え方を

取り戻すことができるようになるのです
 
 さらに驚いたことは、約8年心療内科でうつ治療にかかった

患者さん(番組に出演)が、 「認知行動療法」という言葉を
一度も耳にしたことがない、ということでした。
認知行動療法は、うつ症状に効果があることは

現在広く知られてきているはずですが
、かかられた心療内科では、服薬治療以外の治療方法を

施さなかったことが明確にわかる発言でした。

 
■ 認知行動療法とは

 私たちは物事を考えたり、見るときに、

自分独特のフィルターにかけてその意味を捉えていきます。 
そのフィルターは 誰もが皆同じものではなく、

それまで生きてきた生育過程や、 成長の過程での体験などに
「それぞれの独特な色をつけた」物となっていきます
ですので、全く同じフィルターはありません。
 しかし、人によっては物事を より悲観的にとらえたり、
不安になりがちなフィルターを身につけてしまう人もいるのです。
こうすることで、自分を守ろうと学習してきたのです

 問題は、このフィルターが極端にマイナスな力を発したとき
当人の心は不安や恐怖でいっぱいになってしまうということなのです。 
心が不安に支配されてしまうので、生きる力を次第に失っていきます。
本当は元気になりたい、なのに、その気力がわいてこないのです。

認知行動療法はこのフィルター、

つまり認知」に新たな視点を取り入れる訓練
(新たなフィルターを得る訓練)をカウンセラーと共にゆっくり、
しかし客観的な方法で行っていきます。
基本的には、話を聴き、質問し、心の動きを記録し、
それが適切なものかを共に検証していくものとなります。

私が6年前に「うつ先進国」とNHKも言うイギリスで、そこの大学院で学んだときは、
認知行動療法は既にうつ病治療の中心という流れの中にありました。 
これ無しに うつ治療は語れません。そして、その流れはさらに強まり、
現在は国をあげて 精神疾患の治療に積極的に

認知行動療法を取り入れてきています。

帰国後、最も感じたことは とても閉鎖的な日本の心理の世界。
海外から戻った私はまるで異端児のようでした。
それでも、そんな異端児を重宝に思ってくださる
関係者方々もいてくださる、だから
まだまだ、そう悲観することは無いのかもしれません。

もっと、広い視野で、外で試されていることも取り入れる姿勢が
これからの日本には必要なのでしょう。

まだまだ改善点はある現状ですが、日本に置いても少しづつ前進にむけ、
心の病による苦しみを軽減できればと心から望むところです。



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